光のもとでⅠ
 恐らく、湊ちゃんも同じような考えなのだろう。
 だから、自身の腕をギリギリと握りしめているんだ。
「ヘラヘラした顔では言ってなかったわ。いつもどおり、最高に柄は悪かったけど……」
 湊ちゃんは外に視線を移して言葉を続けた。
「翠葉、今ものすごく精神的に不安定みたいなの。だから、何かひとつでも自信につながるものを形あるものとして持たせたほうがいいって……。翠葉からメンタルな部分の話を聞いているの、今は私じゃなくて相馬なのよ」
 なるほど……。
 少し前までは湊ちゃんの役だったわけだから、それが面白くないわけだ。
 ま、それは立場違えど気持ちはわかる。
 俺だって面白くないことだらけだ。
 俺に関しては自業自得な部分が大半を占めるから、誰に文句を言えるわけでもないけれど。
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