光のもとでⅠ
 湊ちゃん曰く、単なる仕事ではなく「心底面倒くさい仕事」らしい。
 それは少し同情する。
 静さんが絡んで疎かに物事が進められるわけがない。
 しかも、巻き込まれたとなれば、骨の髄まで差し出せと言わんがごとくこき使われるのがオチだ。
 その惨状は察しがつくものの――。
「湊ちゃんの職業で静さんの仕事に関わるのって珍しくない?」
「……極秘任務。言ったら殺されるし口にするのもおぞましいわ」
 言ってコーヒーを飲み干した。
 タンッ、と音を立ててテーブルに置かれたカップが少々哀れ。
「用が済んだらとっとと出ていけっ」
 そんな虫の居所が悪い従姉と話したのは数日前。
 今は愛しい彼女がその嬉しい出来事を話してくれている。
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