光のもとでⅠ
「藤山でデートしたときは、そこに咲いている花の話をした。紫陽花の何色が好きとかカサブランカの花言葉とか……」
 とても幸せな時間だったと思う。
 木陰のベンチに座って今日の最高気温が何度だとか、生前の祖母の話をしたり。
 この手に君を抱きしめてキスをして――。
「でも、どうして?」
「……何を話したらいいのか、と考えてしまうんです。蒼兄とも七つ離れているけれど、秋斗さんは蒼兄よりも年上で、そんな大人の人と何を話したらいいのか――」
「……なんでも、なんでもいいんだ。その日の天気とか、その日にあったこととか。好きな音楽の話とか」
 さっきみたいに嬉しいと思ったことを話してくれたりね……。
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