光のもとでⅠ
 もっとドキドキして――もっともっと……。
 そうは思うけど、彼女には違うことを勧める。
「じゃ、横になって休めばいいと思うよ?」
「あ……そうしますっ――」
 くるりと背を向けた彼女を引き寄せる。
 思わず出そうになった右手を左手に変え、
「その前にこれは全部飲もうね?」
 右手で持ったカップを彼女の前方、口元へ運ぶ。
 もう湯気も立つことのないぬるくなったお茶を。
 俺の腕にすっぽりとおさまった彼女は、俺の手を避けるようにカップを支え、少し上を向いて促されるままにお茶を飲み干した。
 そして、ケホケホと少し咽ては、「では、寝ます」とカチコチした喋り方で俺から離れ、ソファの背に身を隠した。
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