光のもとでⅠ
 声の響き方からして仮眠室からかけてきているのがわかった。
 声が必要以上に響くその部屋からだからなのか、声を発するというよりは呟くような話し方だった。
「こっちは問題ないからあと少し――三十分まで寝かせてやって」
『俺はかまわないけど、翠葉ちゃんはどう思うかな。起案書作るの、すごく楽しみにしてたけど? 起きてそれがもう出来上がっていたりしたら、さぞかしショックを受けるんだろうね』
「……あれは翠にやらせるから心配無用」
『そう、ならいいけど。それから、文書のあれこれフォーマットなんだけど……。俺が学生のときに作ったものを今も使ってるの?』
「そのまま使ってるけど」
 とくに問題があるわけでもない。
『そっか……。今、新しいの用意したから、あとで翠葉ちゃんに渡すよ』
 すぐに察しはついた。
 翠が「フォーマットを探さなくちゃ」とでも言ったのだろう。
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