光のもとでⅠ
 俺たちはそれを抑えこむというわけではない。
 向き合うことで耐える力を習得し、練習や鍛錬を積むことで克服する。
 翠は力技で抑えることしか知らない。
 外が見えないように蓋をして、自分の知らない世界を見ずに今ある世界だけで満足できるように――そんな抑え方。
 むき出しになった感情を初めて俺が目にしたのは入院の説得に当たったときだった。
 否、片鱗程度なら、出逢ったその日に見ていたのかもしれない。
「……なるほどね」
 で、秋兄はそれを俺に教えてどうしたいわけ?
 自分が頼られたって自慢したいとか?
 訊こうとしたら、秋兄がそっと翠に触れた。
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