光のもとでⅠ
「翠、戻るよ」
「はいっ。秋斗さん、本当に……本当にありがとうございました」
「いいえ」
 秋兄は一度言葉を切り、再度口を開いた。
「あのさ、ふたりともどう思う? できることをやらないでいるのと、上限以上のことを無理してがんばりすぎちゃうの。……俺はどっちにも色々問題があると思うんだけど」
 秋兄は間違いなく俺と翠ふたりに向かってそれぞれの言葉を発した。
 翠は寝起きだからか瞬時に意味を理解できず、「え?」と首を傾げる。
 俺は思い当たる節がありすぎて、何を言うこともできなかった。
「ツカサ、おまえは俺が学生時代に作ったフォーマットよりもっといいものを作れただろ? なのにどうして作ろうとしなかった? 何も変える必要がないと思った? それとも――現状に満足しているから?」
 そう言った直後、翠には「いや、なんでもないよ」と笑顔を向けた。
 翠は少し戸惑った顔をしていた。
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