光のもとでⅠ
 信じられなかった。自分とハッキングの攻防をしながらその住所を割り出して尋ねて来るやつなんて。
 そのとき、後ろに控えていたのが蔵元さん。
 今なら容易に想像ができる。
 俺と攻防している間に所在地を突き止めたのは秋斗さんだろうけれど、その攻防中の人間をそこまで運んできたのは蔵元さんだと……。
 だって、そのときこの人台車に乗せられてたし。
 俺、一生の不覚――。
 俺は叩けばホコリだらけの人間で、それでもやっぱり警察なんて場所にはご厄介になりたくはなく、仕方がないからおとなしくこの人の下で働くことにした、……というのが今までの経緯。
 今でもそのときの話が話題になる。そのたびにこの人は、
「何言ってるの? 立派なヘッドハンティングだよ」
 などと言うのだからどうにかしてほしい。
 どこの会社に女の部屋でハッキング仕掛けている人間をヘッドハンティングしにくる人間がいるんだか……(しかも台車に乗って)。
 本当、いつも思うけど、絶対に思考回路がおかしいと思う。間違いなく変人。
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