光のもとでⅠ
 置いてあるものが傷まない程度の空調もきいている。
「はい、どうぞ。好きなだけ叫んでも泣いてもいいよ」
 そう言って彼女を下ろす。
 俺はなんだって今日に限って女の子ふたりに泣かれる羽目になっているんだろうか。
 方や愛しい女の子。方や問題抱えまくりの歌姫。
 翠葉ちゃんに関しては、自分の前で笑っても泣いても何をしてもいい。
 でもこの子は――。
 俺、そんなに面倒見がいいタイプじゃないんだけどな……。
 ま、それはこの子もわかってるか。
「誰を好きと言ってもいいし、どんな懺悔をしようとここには俺しかいない。生憎、置いてある資料が資料なだけに俺がこの場を離れるわけにはいかないけどね」
 二年前、彼女は一度だけここへ来たことがある。
 あれは図書棟の改装工事が終わったばかりの頃だったか――。
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