光のもとでⅠ
 一方的に突きつけられる言葉に彼女は泣くでもなく、ただただ無表情を通した。
 そして、猿の両親が見えなくなると、その場にペタリと座り込み、声を殺して泣き出した。
 両親は結婚しておらず母子家庭であること。
 認知はされているがその父親が芸能界にいること。
 そして、彼女自身が芸能界に片足を踏み入れていること。
 挙句の果てには母親の精神科通院歴まで持ち出されていた。
 ほかにも細々とあれこれ言っては「おまえのような人間は加納の家には不釣合いだ」と罵られていた。
 言われたことのほとんどが、彼女にはどうしようもないことだったと思う。
 俺は木陰から出て蹲る彼女に白衣をかけた。
 言われたことに対してではなく、声を殺して泣く姿が痛々しくて。
 こんな形で生徒と関わること事態が初めてだった。
 彼女が牙を剥いたのはそのときだったかな。
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