光のもとでⅠ
 お子様は範疇外だし極力面倒なことには首を突っ込みたくない。
 生徒会の顧問とはいえ、うちの学園は生徒が主体で教師がイベントの表に出ることはない。
 たまに訊かれたことに答える程度だった。
 知らん顔して通り過ぎればよかった。もしくは、来た道を引き返せばよかった。
 自分がなぜそうしなかったのか。
 誰もいないのに声を殺して泣く姿を見たからかな。
 ほかになんの理由もなく、深い意味もなかったと思う。
「いいよ、今だけは少し先生ぶってあげるからこっちに来なさい。君もそんな顔を人目に晒したくはないでしょ」
 おいでおいでと手招きをして連れてきたのがここ。図書棟の三階だった。
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