光のもとでⅠ
 恋愛は人を貪欲にする。
 好きになってもらいたいし信じてもらいたい、頼ってもらいたい。
 もちろん正反対のことを考える人間もいるけど、俺や猿は間違いなくそう思っている。
「翠葉ちゃんは好きだし信じているの」
「へぇ、それは興味深いな」
「あの子は音を扱うわ。その音にすべてが表れるから信じられる」
 俺には到底理解できない理屈だけれど、彼女にとって「音」は「言葉」よりも絶対なのかもしれない。
 人間関係においては俺もてんで素人だから、「信じる」という言葉ひとつとっても難しいと思う。
 これが企業なら、相手の業績を調べるのなんて当たり前のことで、根こそぎ情報を集めて信用に足る相手なのかを見極める。
 情報という材料が必要不可欠。
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