光のもとでⅠ
「ていうか、見た目どころか中身もいい子だよ」
 ふーん……。この人にそんなふうに言わせる子、ねぇ……。
 事実、俺はその子が関わるプロジェクトの仕掛けにかかりっきりで、もう一ヶ月近く働きづめだ。
 それはこのホテルのオーナー、要は派遣先の上司にこき使われて……といったところ。
 俺がここで働かされるようになってから、こんな大掛かりのプロジェクトを任されたことはない。
 その規模からしてもかなりのものだ。
 ……というよりは、パレスガーデンを会長の誕生日に合わせてオープンしようと企んでいるオーナーの目論見が驀進中。
 その中に彼女の写真ってカテゴリが増えただけのはずなのに、どうも納得がいかない。
 これを機に、彼女を売り出す方向性まで組まれているのだ。
 間違いなく、オーナーはあの子を世に担ぎ出す用意を着々と進めている(俺を使って)。
 突如携帯が鳴った。
『俺だけど、そこに秋斗様いたりしないか?』
 電話の主は蔵元さんだった。
「いますよー。ただいま失恋中にて使い物にはなりそうにありませんが」
 横目で見ると、まだ上司殿はソファでだれていた。
『やっぱ唯のところだったか……。今から行く。悪いけど、今日はそこで仕事させて』
 と、通話が切られた。
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