光のもとでⅠ
 気づいたとしても、それを無下にするようなことは言わない。
 それも少し違うか……。
「言わない」よりも「言えない」で、「言えない」よりは「言いたくない」。
 好きな人たちを傷つけたくないという彼女ならではの考え。
 加えて、記憶をなくしたこともあり、必要以上にいたるところに気を遣っていたのだろう。
 彼女がどこまで周りの人に気を遣っているのかの判断は難しい。
「気遣い」とはいうものの、彼女においては気を遣っているつもりがないと思う。
 ほとんど無意識下の行動。
 もしくは、思考回路に組み込まれ済み。
 そういうものが本人の負担になるのかならないのか……。
 なったとしても、それをやめさせることは容易ではないだろう。
 それに、それがなくなったら彼女ではない気がする。
< 5,226 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop