光のもとでⅠ
 四年前の異動で急遽俺の上司になった六つ下の御曹司。
 どう考えても子守役に付けられた感が否めなかった。
 秋斗様の専属秘書になった始めの頃は、仕事の内容や会社内部のことを教えるところから始まり、半年後にはひとりで仕事ができるようになっていた。
 仕事ができるようになった、というのは新入社員とかそういうレベルではない。
 システムを開発し、それを運用できる状態にまでして会社内部へと食い込ませることまでをもやってのけるようになっていた、という意味。
 この短期間でここまでできるようになる新入社員はまずいない。そのうえ、人を動かす才も持っていた。
 年下とか社長の息子とか、そういうものを一切引いたとしても、仕事上尊敬のできる人間だと思えた。だから、ずっとこの人の秘書というポジションにいる。
 どうにもならないボンクラだったらとっとと会社を辞めて、ほかの会社に再就職するつもりでいた。が、そんなことをせずに済んだくらい、この人は会社に貢献している。
 普段なら仕事を投げ出すようなことはしない人間。それがこの二日間連続欠勤。
 唯が変なことを言っていたけれど、失恋とは翠葉お嬢様がお相手なのだろうか?
 先日ふたりを見ていた限りでは、仲睦まじかったように思える。それがどうして……?
 とりあえずは仕事だ、仕事――。
 これを片付けてもらわないことには社長から直々にクレームが来る。
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