光のもとでⅠ
『お嬢さんの心と身体はイコールではありません。身体は色んな意味で悲鳴をあげて症状を表に出すことができる。けど、彼女の心は? ……考えたことがありますか? あれもだめ、これもだめ、そうやって制限された中で生きてきたお嬢さんがどれほどの不満を抱えているか。どれだけの負の感情をコントロールしているか。……いえ、コントロールではありませんね。あれはただ無理矢理抑え付けているに等しい』
 考えたことがないわけじゃない。
 幼い子には難しすぎる制約で、それでも翠葉はそれを守ろうといつでも必死だった。
 いつからか、その制約の中での生活に楽しみを見つけ、それを自分の糧にできるようになっていた。
 それが音楽であり、カメラであり、植物を育てることであり、散歩をすること。
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