光のもとでⅠ
「すみません、不出来な親で……。今年は例年と違うとわかっていつつも、娘のそんな心情変化にまでは気づけませんでした」
『いえ、自分すら騙そうとしている人間の心を読み取るのはひどく難しいものです。それが実の子であっても患者であっても。とくにお嬢さんは厄介ですよ。半分は理解していますからね。この身体があるからこそ今があるということを。そのうえでの葛藤だから余計に深い部分がわかりづらい』
 あぁ、そんなことも話したな……。
 星がきれいな屋上で――。

 ――「……この身体じゃなかったら、なんて考えても何があるのかわからないんだよ」
 ――「『もしも』の元気な私がいたら、今の私はここにいないでしょう?」
 ――「……藤宮に通うこともなく、今、周りにいる大好きな友達とも会えることはなかったよ。そう考えるとね、少しだけ、この身体に感謝してもいいかな、って思えるの」

 それらの言葉には嘘もごまかしも、俺たちへの気遣いも、何も含まれはいなかったのかもしれない。
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