光のもとでⅠ
 正常値と言われる数値に近づくのに、いつもと違うというだけで身体がおかしいと判断するのだから。
 巷で言われている「正常値」を今すぐ翠葉が獲得できたところで、あの子の身体はその変化にはついていかれない。
 だから余計に悲しくなる。
 何がいい悪いではなく、翠葉の身体にあった数値を維持することが一番最良なのだから。
 ほかの何とも比べることはできない。
 けれど、一般論やら正常値、そんな言葉はどこにでも転がっていて、大人である親の俺たちすら何を基準にしていいのかがわからなかった。
 子どもの翠葉はもっとだろう。
「こんな話をされても困っちゃうよなぁ……」
「いえ、困るというよりは、尊敬、ですかね。子どもの心配をしていないわけじゃない。どちらかというと親ばかの類。それでも自分の上司は仕事放棄はしませんから」
 そう言って俺に笑みを向けてくれる。
< 5,287 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop