光のもとでⅠ
 きっかけは佐野の堂々すぎる告白。
「意識するのは意外と簡単なことだったかも……」
「こういうのってさ、気づいたときには気になってるよね」
 秋兄はどこか遠くを見るように話した。
 あぁ、秋兄の視線の先は図書棟だ……。
 今日、翠葉は欠席。
 でも、これからも、紅葉祭まで翠葉があそこで作業することはない。
 ゲストルームで会計の仕事ができるように、何もかもセッティングしてしまったわけだから、夕方に秋兄のところで休むこともなくなる。
 きっとそんなことは秋兄も知っていて――。
 視線の先に翠葉がいないとわかっていても、思いを馳せるのだろう。
 恋って、人を好きになるって、こういうことなんだろうな――。
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