光のもとでⅠ
「若槻くん……」
 先を続ける言葉が見つからなかった。
 彼の過去はあまりにも過酷すぎる。
「栞さん、どうやら人って変われる生き物みたいです」
 茶化して言うけれど目は笑っていなかった。
「ここに変わりつつある人間がいる。だから……いつかリィもありのままの自分を受け入れられる日が来るかもしれない。それはものすごく先の話かもしれないし、何かきっかけがあったらすぐなのかもしれない。それまで、俺はリィに何ができるのかを一緒に探す人でありたいです」
 今まで、彼が内面に触れる会話をしてくれたことはなかった。
 それだけに衝撃的だった。そこへ、
「俺が自分のコントロールができなかったとき、サポートについてくれてありがとうございました」
 腰からきっちりと頭を下げた。
< 5,385 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop