光のもとでⅠ
「わっ、やめてっ!? ほら、私は看護師だったし――」
 どうしてか慌てる自分がいる。
「それでも、です。あのときの俺は感謝の『か』の字も心には思っていなかったし、今だから言えること。だから言いたい。ありがとうって」
 こんなふうに急に素直になられると、心の準備ができていなくてあたふたする。
 彼が翠葉ちゃんに向ける真っ直ぐさは毎日のように見てきたけれど、自分に向けられたことはなかったから……。
「あのですね、御園生兄妹のすごいとこ。どんなにひん曲がった人間でも素直にしちゃうとこ」
 にっ、と笑って彼は洗面所に入っていった。
 きっと洗濯物を片付けている最中だったのだろう。
「栞さん、今日は実家でしょ? 俺、適当に掃除機かけておくんで今日は何もすることありませんよ?」
 顔を出したかと思えばそんなことを言う。
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