光のもとでⅠ
 視線を翠の手に移せば、その液体はお茶ではなかった。
 どこからどう見てもスポーツ飲料。
「で、俺もポカリなのは嫌みのつもり?」
「……嫌みというか嫌がらせにすらならない事実には入れている最中に気づいたよ」
「ふーん」
「あ、私のはちゃんときっちり二倍希釈だからねっ?」
「別に何も言ってないけど?」
「言われる気がしたから?」
「そこまで突っ込むつもりはない。御園生さんじゃあるまいし……」
 受け取ったグラスをそのまま口もとへ運び、口腔内と喉を潤す。
 俺はこれをうまいともまずいとも思わない。
 何をどうしたら希釈しないと飲めないほど苦手なアイテムになるのか、五十文字以内で簡潔に答えて欲しいものだ。
 そんなことを考えていると、翠の視線が俺に固定されていることに気づく。
< 5,424 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop