光のもとでⅠ
「……やっぱり、持っていたい」
 デスクの引き出しから持ち手がブルーのハサミを取り出し、ゴムを切った。
 そして、これをもらったときに付いていた短いチェーンにとんぼ玉を通し身につける。
 夏服では無理だけれど、冬服ならば、ブラウスで隠れて見えなくなる。
 髪の毛につけていたときのように、咄嗟に素手で触ることはできないけれど、「ここにある」というだけでも安心材料になる気がした。
 毛先を丁寧に柘植櫛で梳かしながら、さらに頭の中で流れを追う。

 一日に二回ある校内巡回は沙耶先輩と一緒に回ることにないってる。
 準備段階では生徒会と実行委員が校内巡回をしていたけれど、実際にお祭りが始まれば、生徒会も実行委員も持ち場に拘束されることが多くなり、隅々までの巡回はできなくなる。
 そんなときに力を貸してくれるのが風紀委員。
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