光のもとでⅠ
 今ですら危うい均衡を保っているだけにすぎない。
 それでも、「今」を維持できているのはみんなのおかげなの。
「怖いの……わかるって言ってくれてありがとう。でもね、踏み出した先には、信じた先には大好きな人たちがいたよ。だから、海斗くんもきっと大丈夫。ほら、私はここにいるでしょう?」
 海斗くんの顔を見るために少し体を離したら、海斗くんはポカンと口を開けていた。
 やっぱり、背中じゃなくて頭かな?
 そう思って膝立ちになると、また海斗くんの頭のてっぺんが見えた。
 いつもなら絶対に届かないその頭に手を伸ばし、いつも蒼兄にしてもらうようにポンポンと軽く叩いて満足する。
 海斗くんが不思議そうな顔で見上げるから、「おまじない」とだけ答えた。
 ふたり顔を見合わせて笑っていると、仕切りの向こう側から、
「ふたりとも、そろそろスタートだよー?」
 河野くんの声だった。
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