光のもとでⅠ
 何が問題かというならば、見知らぬ人を接客しなくてはいけないこと。
 それが男子であろうと女子であろうと、テーブルが空いていたらすぐにご案内しなくてはいけない。
 ホールスタッフとしてここにいるのだから、それをやらないことにはここにいる意味がなくなってしまう。
 腹を据えてご案内するも、どうにもこうにも声は小さく滑舌も悪い。
 桃華さんは品良く笑みを添えて極上の接客をするし、飛鳥ちゃんもノリのいい対応でサクサクと捌いていく。
 そんな中、私と香乃子ちゃんだけがおろおろとしていた。
「香乃子ちゃんも苦手?」
 香乃子ちゃんからはなんともいえない苦い笑いが返された。
「ほら、そこのふたり、ちゃんと働く!」
 佐野くんからの喝に背筋をピンと伸ばす。
 そんなときだった。
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