光のもとでⅠ
「俺もクラスに戻るから、お昼までこっちよろしくね」
 久先輩は軽く助走をつけて走りだした。
 違和感の正体――久先輩と茜先輩が一緒に行動しないこと……?
 釈然としない答えに首を捻る。
 それはいつからだっただろう……。
 あまりにも周りが賑やか過ぎて気づかなかったけど、思い返してみれば、それは朝からずっとだった。
 それに、いつもなら顔を合わせたら必ず視線を合わせてくれる茜先輩が、声だけで素通りしていったことにも違和感を覚えたのだろう。
「翠葉ちゃん」
「……朝陽先輩」
「気づいた?」
 少し小さな声で訊かれる。
 何も答えられずに朝陽先輩を見上げると、文句なしに格好いいと言われるその顔がにこりと笑む。
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