光のもとでⅠ
 確かにツカサの声や言葉、笑顔には棘があったと思う。
 でも、その原因は、唯兄の「司っち」という呼び方ではないだろうか。
 ツカサは唯兄に呼ばれるたびに眉間のしわが深くなっていく。
 唯兄は私の視線に気づくと、「なぁに?」とにこりと笑った。
「ううん、なんでもない……」
 たぶん、唯兄も原因はわかっていて、それでも改めるつもりがないのだろう。
 海斗くんならば想像できるけれど、ツカサが「司っち」と呼ばれることになったいきさつは想像できそうにない。
「俺もお昼一緒していい?」
 唯兄に訊かれ、
「あ、うん。桃華さんたちがよければ」
 視線をめぐらせると、海斗くんは間を置かずに快諾してくれ、桃華さんもにこりと微笑み「喜んで」。三人目のツカサだけが無言だった。
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