光のもとでⅠ
 佐野くんは階段をタタン、と二段下りると、
「ほら、戻れよ。初っ端から時間押してどーすんの?」
 トン、と海斗くんの背を押した。
 海斗くんは昇降機に戻り、佐野くんはそれを見届けずに階段を上がり始める。
「佐野くんっ!?」
 思わず呼び止めたものの、その先に言葉が続かない。
「何、御園生」
 振り返った佐野くんはいつもと変わらない。
「俺、これを上の人間に届けなくちゃいけないから、用がないなら行くよ」
 と、階段を上り始めた。
 それ以上引き止めることはできなかったし、引き止めたところで言葉をかけることもできなかった。
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