光のもとでⅠ
 こんなことを言ったら話してくれないだろうか。
 それとも、「弱いから話さないでほしい」と取られてしまうだろうか。
 不安に駆られ、そういう意味ではないと言おうとしたら、茜先輩が顔を上げた。
「なら、大丈夫ね」
 と。
 口元にだけ笑みを浮かべ、それまでとはまた違う声を発する。
 変わったのは声だけではなく、その場の空気までもが変わった気がした。
 不安定なものが、より不安定に――。
「自分を強いと思っている人は信じない。そんな人、本当は強くないのよ。自分の弱さを認めたくないだけ。人に見られたくないだけ。私がそうだからよくわかるわ」
 まとまった言葉が返ってきたときには、自分の前にいる人が本当に茜先輩なのかの自信がなくなっていた。
 この人は、誰――?
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