光のもとでⅠ

20

「翠葉ちゃんはいいわよね? ご両親は揃っているし優しいお兄さんもいる。私なんて、異母兄弟がいたところでライバルでしかない」
 私は頷くことも首を振ることもできなかった。
「音楽だって好きという純粋な気持ちだけで楽しめる。そこに勝ち負けなんてない。コンクールに出たのだって一度きりだものね? 翠葉ちゃんが探していた子だとわかってから大きなコンクールの出場者名簿を調べたの。でも、翠葉ちゃんの名前はどこにもなかった。コンクールとか関係なく、楽しく音楽を続けてきたのでしょう? ……ずるいわ」
 確かに、私はコンクールというものが苦手で、あの一件以来そういったものには出ていない。
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