光のもとでⅠ
 自分から何かを提示することはできなかった。
 茜先輩は久先輩の気持ちを受け止め、自分の気持ちを伝えたいのだろう。
 けれど、そうすることでまた壁が立ちはだかるのだ。
 自分の生い立ちや家族のことで、心をズタズタに切り裂かれてしまう。
 ふと、ツカサの言葉を思い出した。

 ――「現時点で会長にできることがあるのなら、あの人が動いていないわけがない」
 ――「会長はやれるだけのことをやったあとだ。今は茜先輩を待っている」

 それはつまり、久先輩は久先輩で何か策を講じているということ?
 やれることはやった。だから、プロポーズをした……?
「……茜先輩、これは私が久先輩から聞いたことではありません。私がここへ来る前に、ツカサが私に言ったことです。……久先輩はやれるだけのことをやって、今は茜先輩を待っているんだそうです」
 こんな言葉にはなんの力もないだろう。
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