光のもとでⅠ
 でも、伝えたかった。
 久先輩が待っている、と。
 そんなことは茜先輩だって痛いほどにわかっているだろう。それでも、伝えたかった。
「茜先輩は信じたいんですよね? 久先輩の気持ちがずっと続くことを。自分の気持ちがずっと続くことを」
 声を殺して私の肩口で泣く茜先輩は小さい子みたいだ。
 でも、普通の小さい子とは違う。
 泣き方を知らない子みたいだった。
 そう思ったとき、私はようやくその背に腕を回すことができた。
 さっき感じた戸惑いはもうない。
 ゆっくりと、何度もその背をさすった。
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