光のもとでⅠ
「初めて会ったとき、とってもかわいくてどうしようかと思いました。おうちに連れて帰ってずっと眺めていたいくらいにかわいくて、髪の毛がふわふわで触りたいなって思っていたら『触っていいよ』って言われて、何も考えずに手を伸ばしました。身長は私とそんなに変わらないのに、話し声ですら自信に満ちていて、とても羨ましかった。私にはそんなふうに話すことはできないから。歌を聴いたときはもっとびっくりしました。私はそれまで声楽を聴いたことはなかったから、茜先輩がなんて呼ばれているのかすら知りませんでした。それでも、あの声は天使が歌っているように思えたし、歌っている茜先輩は妖精に見えました。……こんなふうに歌えたら、声を出せたら気持ちがいいだろうな、って思いました。さっきの歌では歌のお姫様って思いました。勉強を教えてもらった記憶は途切れ途切れ……。もしかしたらその場にツカサがいたのかなって思うんですけど……。私、先輩に勉強を教えてもらったのはあれが初めてだったんです。いつも学年首位だなんてすごいなって。自分があとどれくらい努力したらそこにたどり着けるのかな、って考えます。……人に知られたくないことがあって、でも、言わなくちゃいけないような空気の中、茜先輩が言いたくないことは言わなくていいって言ってくれました。すごく嬉しかったです。今までそんなふうに言ってくれる人はいなかったから……。人と比べたら同じようにできることが少ない私を、そうと知っても生徒会においでって言ってくれた。……今まで、私に関わってくれた茜先輩が大好きです。それから、いつも笑顔でいる茜先輩をすごいと思います。いつも笑顔でいられるほど人生は平坦ではないし、努力している人がつらい思いをしていないわけがないと思うから。……努力は報われるまでがきつい。うまくいったときにしか報われたなんて思えない。だから、茜先輩をすごいと思います。それから、色んな人に声をかけられるのに、みんなのことを名前までちゃんと覚えていてすごいな、って思います。それから――」
「ありがとうっ」
 まだまだ言い足りない。
 もっともっとたくさんある。
 ありすぎて、ずっと聞いていてくれないと話しきれない。
「ありがとう、翠葉ちゃん……。私、ひどいこと言ったのに――」
 茜先輩は私の手をぎゅっと握りしめた。
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