光のもとでⅠ
 間奏で加わるスネアの音がとても華やかに聞こえる。
 何度も何度も一緒に練習した曲だから、歌詞も覚えている。
 でも、朝陽先輩の言葉を聞く前と聞いたあとでは何かが違った。
 ツカサはこれを誰に向けて歌っているのだろう……。
 そんなことが気になって仕方なかった。
 ツカサに肘で軽くつつかれはっとする。
 わっ、私、伴奏走ってるっ――。
 即座にほかの音とイヤーモニターに意識を戻し、態勢を立て直す。
 私、今日は絶対におかしいと思うの。
 今は伴奏に集中しなくちゃいけないのに……。
 そう思って顔を上げると、フルート奏者の人と目が合って、にこりと笑いかけてくれた。
 パーカッションのふたりを見ても同じような反応が返ってくる。
 その表情の柔らかさに心が落ち着きを取り戻す。
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