光のもとでⅠ
「……藤宮先輩、笑顔で翠葉ちゃんのこと覗き込んだりしましたか?」
「いや、してない。翠が勝手に百面相してるだけ」
 そう答えると、ひとりさっさと昇降機を降りてしまった。
「翠葉ちゃん、今日はいつもに増して表情豊かだね?」
 にこにこと話しかけてくれる香乃子ちゃんに和みつつ、さっき空太くんにも「百面相してる」と言われたことを思い出した。
 私、今日、絶対におかしい……。
 火照った顔を冷やしたいと思うのに、生憎、今は自分の手も冷たくはない。
 しかも、渡された飲み物はホットのお茶だった。

「このあとはダンス部がスクエアステージで踊るの。だから、第二部までは翠葉ちゃんは休憩」
 そう言われて、私はパイプ椅子ではなく、ビーズクッションへ腰を下ろした。
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