光のもとでⅠ
「翠の困った顔は嫌いじゃありません。からかい甲斐のある人間ですし、そこら辺には生息していなさそうな生き物なので、珍物として気に入っています。できれば手懐けたいと思うくらいには」
 なんだかひどいことを言われている気はするのだけど、触れているわけでもないのにツカサの体温が感じられるほど近くにあって、さらには大好きな声が耳元で響くから、自分の意識も顔も正常を保てそうにない。
 なんで――なんで今日は、こんなにもツカサを意識してしまうのだろう……。
 きゅっ、と目を瞑り下を向くと、ツカサの声が私に向けてかけられた。
「翠……それ、溶ける前に胃におさめろよ」
 私が顔を上げたときには、ツカサはその場を立ち去ったあとだった。
 ツカサがいた右側、そのあたりだけがまだなんとなく熱く感じる。
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