光のもとでⅠ
「嫌よっ、知らない人に楽器を触られるのなんて絶対に嫌っ」
 奏者が業者以外の人間がハープに触れることを拒んでいた。
 どうやら、そのハープは彼女の私物とのこと。
 思わず蓮井先生の顔色をうかがってしまう。
 蓮井先生の話によると、いつも弦が切れるとメーカー担当者を呼んで張り替えていたらしい。
 私のお師匠様がこの場にいたら、「何ふざけたことを言っているの」と一喝されてしまうだろう。
 私はハープを習い始めたとき、まず最初に楽器のメンテナンスの仕方を教わった。
 楽器のメンテナンスができない人に演奏技術の上達はない。
 私の先生はそう言う先生だった。
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