光のもとでⅠ
「じゃぁ、どうしてそんなに真っ赤なの?」
「……秋斗さん」
「なんでしょう?」
「私、今、逃げ場がないので――お願いだからいじめないでくださいっ」
 彼女をソファに寝かせ、
「そんなに困る?」
 訊きながら自分の格好を見直す。
 彼女に視線を戻すも目すら合わせてはもらえない。
「しょうがないな……。確かに上着は着てると暑いし……」
 ジャケットを脱ぎソファの背にかける。
「これならいい?」
 言いながらネクタイを緩めた。
 少し普通に話がしたくて、彼女の側に腰を下ろす。
「部屋にいなかったからびっくりした。リビングを見渡してもいないし」
「……空が、見たくて……」
 と、彼女が窓の方に目をやった。
「空?」
 振り返り、なるほど、と思う。
 このソファに横になると背もたれで空は半分ほど見えなくなる。だから、向かいのソファの裏側にいたんだ。
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