光のもとでⅠ
 きっちり合わせたつもりだけれど、チューナーは使っていない。
 その代わり、ここには歩くチューナーがいる。
「都さん、神楽さん、最終チェックお願いできますか?」
 ふたりはにこりと笑顔になり頷いてくれた。
 結果、張り替えた弦以外にはOKをもらえた。
 あたりを見回して思う。
 この環境だとどうしても音は高くなってしまうだろう。
 会場自体が乾燥気味だし、ここはライトも浴びる。
 すると、必然的に楽器のテンションが上がり、音が高くなってしまうのだ。
 第二部の後半であそこまで音が狂ってしまったのは環境のせいもあるのだろう。
 だから、最後にもう一度だけ弦をしっかりしならせた。
 これでどれほどピッチを維持できるかはわかならい。
 でも、やらないよりはやっておいたほうがいい。
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