光のもとでⅠ
「翠葉ちゃん? また眉間にしわ寄ってるけど、どうかした?」
 通りすがりの朝陽先輩に眉根を指される。
 今日は朝陽先輩にこんなところを見られてばかりだ。
「なんでも、ない、です」
「……なんでもないって顔をしてないから見逃してあげない。ほら、言ってごらん? ほかの人には黙っていてあげるから。なんなら彼、佐野くんも追い払おうか?」
 にこりと笑って気遣ってくれるけど、佐野くんを追い払う必要なんてない。
 奈落に戻ってきたときに手に持った歌詞カードを見ながら歌を聞くと、もっと堪えるって何……。
「私が歌う曲も恋愛を歌うものが多いみたいだけれど、ツカサの歌もそうなんですね……」
「そうだね、全部が告白ソングみたいなものだし、はもる部分も全部別どりしてツカサの声になってる。そこまで徹底するくらいにはがんばってると思うよ」
 そこまでがんばって想いを伝えたい人がいるのね。
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