光のもとでⅠ
「実はね、さっき……ものすごく不本意ながら本人に訊いてしまったの」
 そのときも私は慌てふためき、「なんでもない」と取り繕った。
 どうしてかな。
 知りたいのに知るのが怖い。
「あの……御園生さん。それで藤宮先輩がなんて答えたのかが知りたいんですが……」
「え……? あ、えと……私自身が尋ねた内容に驚いて、慌てふためいているうちに置いていかれてしまいました」
 たぶん、この説明で間違えていないはず。
「……佐野くん?」
「……なんでしょうか、御園生大先生」
「どうして余所行きの笑顔を貼り付けて、私が御園生大先生になってしまったんでしょう?」
 佐野くんの動作と口調があまりにもカチコチしたものになったから尋ねてみた。
< 5,819 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop