光のもとでⅠ
 モニターに映る茜先輩は、いつもと変わらないように見える。
 でも、感じる。
 心を解放して歌ってはいない、と。
 いつもと同じように見えるけれど、いつもと同じようには聞こえない。
 あの、圧倒的な感じがしない。
 それは、私が事情を知っているからなのか……。
 知らなければ何にも気づかず聞いていたのだろうか。
「翠葉ちゃん、少し話してもいいでしょうか?」
 いつの間にか隣に香乃子ちゃんが戻ってきていた。
 今度は香乃子ちゃんがですます口調。
 さっきの佐野くんに似ていたけれど、雰囲気が違う。
 伝わってくるのは緊張――。
< 5,853 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop