光のもとでⅠ
 香乃子ちゃんは私の方は見ておらず、自分の足もとに視線を落としていた。
「あのですね、七倉は失恋しました。失恋って失う恋って書くけど、違うと思います。想いは失わない……。私は、たとえ佐野くんが飛鳥ちゃんを好きでも、佐野くんが好きです」
「……それはどんな気持ち?」
「そうですね……。幸せです」
 香乃子ちゃんの頬が少し緩む。
 だから、嘘じゃないと思えた。
 でも、どうして、とは思う。
 どうしてそんなふうに思えるのかが知りたい。
「あ、どうしてか不思議に思ってます?」
 香乃子ちゃんはまだ下を向いたままだ。
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