光のもとでⅠ
「それはもちろん……」
 茜先輩に手を握られた。
 すごく強い力で握られた。
 痛いくらいに強く握るその手は、小刻みに震えていた。
 昇降機に茜先輩が乗ると、私の隣にサザナミくんが並ぶ。
 茜先輩をステージへ送り出すために来たのだろう。
「かっこよく歌ってきてよね」
 サザナミくんはどこまでも茜先輩を追い詰める。
 茜先輩は何も答えず、昇降機の上げ下げをしている実行委員にだけ合図を送りステージへと向かった。
「御園生さん……今日、ずっと茜ちゃんの側にいてくれてありがと」
 視線は茜先輩に固定したままのサザナミくんに言われる。
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