光のもとでⅠ
「……私は、何もできなかったよ」
 藁にだってなれたのかは怪しい。
「そんなことない。あの人が人に弱みを見せることなんてないんだ。だから、それだけでもグッジョブ賞もん」
 そこにやってきたのは都さんと神楽さんだった。
 どうやら、都さんのヴァイオリンの弦が切れて、エレクトリックヴァイオリンに変えるためらしい。
「音色は変わっちゃうけど、アンプを通す分、音量の確保はできるわ」
 都さんはそう言って笑った。
「で、おひい様は何を歌うの?」
 神楽さんに訊かれて困る。
 私はマルかバツかしか知らないのだ。
< 5,865 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop