光のもとでⅠ

36

 会場には、「マイクの調子が悪いため、しばらくお待ちください」とアナウンスが流れる。
 たいていの人は、「少しおかしい」くらいにしか思わなかっただろう。
 茜先輩の不調はそのくらいのものだった。
 ただ、いつものパーフェクトなコンディションではなかっただけ。
 音程だって発声だって、極端にひどかったわけじゃない。
 学園祭という枠の中ならば、全然許容できる範囲だった。
 マイクの故障で歌が止った、とそう言い訳できる程度には歌えていたのだ。
 それを……私が取った行動ひとつで完全に止めてしまった。
 どうしよう……こんなことになるとは思いもしなかった。
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