光のもとでⅠ
 ステージに上がるとき、香乃子ちゃんにミネラルウォーターを持たされ、嵐子先輩にはハンカチとパウダーコンパクトを持たされていた。
「茜先輩、お水です」
「翠葉ちゃ……」
 茜先輩はボロボロと涙を零し泣いていた。
 暗闇に目が慣れて顔が見えるようになり、自分がしたことの大きさに気づく。
「ごめんなさいっ、余計なことしてしまって――」
「……翠葉ちゃん、余計なことじゃなかったよ。少なくとも、俺にとっては余計なことじゃなかった」
 そう答えてくれたのは久先輩。
「うん……意味はあったの。一番強力な布石だった」
 茜先輩の声が掠れている……。
 どうしよう――。
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