光のもとでⅠ
 昇降機が下がると、奈落でも拍手喝采だった。
 茜先輩はその中に吸い込まれるようにして昇降機を降りた。
 本当に、いつもどおりの茜先輩……。
「翠葉ちゃん、ありがとう」
 久先輩が私の隣ではにかんだ笑顔を見せる。
「私は……何かできたんでしょうか」
「……千里、どうする? あの茜を泣かせた子がこんなこと言ってるけど」
 久先輩が奈落で待っていたサザナミくんに声をかけると、
「ほーんと、鈍感でやんなっちゃいますよね」
 サザナミくんは呆れた顔で返事をした。
 続けて、
「鈍感を相手にするって大変だろうなぁ……。俺にはまず無理」
 まるで誰かに向けるように口にする。
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