光のもとでⅠ
 思い出せる笑顔は作為的なものか、苦笑や冷笑、嘲笑の類のみ。
 え、嘘――。
 自然に笑っている顔の記憶がない……?
「何、笑わない人なの?」
「……無表情がデフォルト? 作られたきれいすぎる笑顔や苦笑冷笑嘲笑はよく見るんだけど、自然に笑ったところはほとんど見たことなかも……。いつも呆れられてばかりだし……」
 真面目に悩んでいると、
「御園生、それだけで誰かわかっちゃうからあまり言わないほうがいいよ」
「ど、どうしてっ!?」
「だって、御園生の周りにいる男で無表情な人間っていったらひとりしかいないじゃん」
「さ、佐野くんっっっ」
「言わない言わない。黙ってるって」
 佐野くんは、「困ったやつめ」と言いながら笑った。
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