光のもとでⅠ
「そうかもしれないです」
「それは好きになったことを? それとも、断ったことを?」
「……断ったのは自分で決めたことだから後悔なんてしちゃだめだと思うし、後悔しても何も変わらないと思う。でも、好きにならなければこんなふうに困らなかったかな、とは思います」
 栞ちゃんのため息が聞こえると、
「翠葉ちゃん、どうしてそんなに我慢しちゃうのかな?」
「我慢、ですか?」
「うん。好きなら好きでいいと思うの。私から見ると、もっと楽な道があるのに、翠葉ちゃんはトゲばかりの茨の道を選んで歩いているように見えるわ」
「楽な道はどれでしょう?」
 翠葉ちゃん、君はそんなこともわからないの?
「好きな人に甘えてしまえばいいのに。秋斗くんは受け止めてくれるだろうし、断られた今でも待ってくれているのでしょう?」
「――でも」
「……でも?」
 気にしているのは雅のことだろうか……。
「翠葉ちゃん、私知ってるのよ。検査の日、雅に会ったでしょう?」
「どうしてっ!?」
「あまりにも翠葉ちゃんの様子がおかしいから静兄様を問い質したのよ。お兄様に限って調べてわからないことなんて何もないから」
 先日湊ちゃんに怒られたばかりだが、栞ちゃんも裏事情を知っているとなれば、俺はどのタイミングかでやはり怒られるのだろう。それは仕方がないかな……。
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